自己負担割合原則2割変更の見直しについて

お役立ち

利用者意向実態調査の背景

平成27年8月より介護保険制度の維持や負担の公平化、ご利用者自身の負担能力に応じた負担を求める観点から年金などの収入が一定のご利用者は自己負担が2割となりました。また平成30年8月には更に3割負担も施行され、介護保険サービスを利用する側の経済的負担は増しているように感じられます。財務省による財政制度等審議会・財政制度分科会(令和4年4月13日開催)において「 利用者負担については、2割・3の導入を進めきたが今般の後期高齢者医療における患負担割合見直し等を踏まえ、 ①介護保険サービスの利用者負担を 原則2割とするこや2割負担の対象範囲の拡大を図ること、②現役世代との均衡観点から現役世代並み所得(3割)等の判断基準を見直すことについて、第9期介護保険事業計画間向け結論を得るべく検討していくべき。」と提言がなされました。
次回、令和6年の介護保険制度改正に向け、ご利用者の「原則2割負担への検討」は、更に経済的負担は増すが予想され、協会として利用者の意向を把握すべく実施したアンケート結果および関連調査結果をもとに協会としての見解について会員および関係団体にお伝えいたします。

◆利用者の37.4%がなんらかのサービスの見直しを行う

協会独自調査結果(2022年7月公表)により、利用者の37.4%が自己負担が2割になった場合デイサービス等のサービスの見直しを行うと回答。そしてその理由の66%が「負担金額が大きい(支払に困る可能性がある等)」として、経済的理由にてサービスを制限する可能性が高いことが判明しました。
また、サービスを見直すに当たっての心配事としては「「運動が減るので筋力低下等で調子(体調等)が悪くなるが最多で30.4%となり、次いで「外出する機会が少なくなる」21.9%という結果となりました。心身の機能の維持向上、社会交流の機会をつくる等、デイサービスの本来の介護保険上の役割の重要性を確認すると共に在宅生活継続していく高齢者に対して自立支援に向けたデイサービスの本来の役割を社会に提供する上で課題となることが明らかと考えます。

◆ケアマネジャーの87.5%がケアプラン作成に影響、利用者がサービスを減らす可能性96%

合わせて高齢社会ラボ(運営:株式会社エス・エム・エス、2022年6月30日公表)のケアマネジャー向けに実施された【財務省の自己負担2割原則提言に関する意識調査】結果として以下のように公表されています。
「ケアマネジャーの87.5%がケアプランを作成する上で影響があると回答。仮に原則2割負担になった場合、サービス利用料を支払えずサービス利用の量を減らす利用者はいると思いますか?」という設問に対して、「数多くいると思う」という回答が52.4%、「ある程度はいると思う」という回答が43.6%だった。」合計96%がサービスを減らす可能性があるとしており、介護保険制度のキーマンであり、利用者のサービス調整者であるケアマネジャーの困惑は、介護保険制度そのものへの信頼損失に繋がることを示唆しております。

要介護高齢者の負担割合の現状

令和2年10月に厚生労働省より公表されております「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況」によると全国の通所介護事業所数は24,087 事業所であり前年度より微増しており、各地域にとって通所介護は必要とされております。
負担割合の分布状況は令和3年4月15日財務省「社会保障等」でも記載されているとおり1割負担が92%、2割負担が5%、3割負担が3%という分布になっております。
原則介護サービスの利用者の自己負担を2割へ引き上げた場合「1割負担92%」が対象となり、殆どのご利用者の自己負担が2倍となり、前述の結果の通り自己負担額が増え必要な回数の利用ができなくなるご利用者が出てくることはとても大きな社会的影響をもたらします。
また、食事代や保険外サービスを利用しているご利用者(宿泊付き等)の通所介護サービスをご利用の場合、実費(保険外)での自己負担額が介護保険サービスとは別途にあり、利用者の経済的負担増の流れは容認することができません。

負担能力に合った「適正な」設定基準の見直しを要請

これらの調査結果より日本デイサービス協会では、協会理念に照らし合せデイザービス事業者が持続可能なサービス提供と高齢者の視点に立った介護保険制度を継続していくために利用者の負担割合の原則2割の変更について、負担能力に応じた「適正な」設定基準の見直しが必要と考えます。また現状の生活保護法(昭和25年法律第144号)第6条第1項に規定する被保護者である場合や第二号被保険者についての一律の1割負担に対する問題も出てまいります。
本件については、デイサービスのみならず全ての介護保険サービスに大きく影響する問題であり一律的な負担割合の議論ではなく厚生労働省、保険者等でしっかり実情に沿った議論をしていくように強く求めます。

高齢者の多くは住み慣れた自宅での生活の継続を希望されていることは周知の事実であり、その実現に向けた通所介護事業の果たす役割は大変大きく、継続的に運営し続けられるように活動してまいります。

◆一般社団法人日本デイサービス協会 「財務省からの自己負担原則2割導入提言における利用者意向調査結果」

◆高齢社会ラボ「(ケアマネジャー対象)財務省の自己負担2割原則提言に関する意識調査」

 

一般社団法人日本デイサービス協会

理事長 森 剛士