介護保険制度では全国⼀律の介護報酬設定となっております。国の法制度である以上、統⼀された制度設計がなされることは全ての介護事業者は理解しているところでありますが、⼀⽅地⽅と都市部での⼈⼝の差や居住環境の差は周知の通り⼀律ではありません。
現在の制度では「中⼭間地域等に居住する者へのサービス提供加算」があり、問題として捉えているようですがその算定要件においては、
・厚⽣労働⼤⾂の定める中⼭間地域等に居住する利⽤者にサービスを提供すること
・通常の事業の実施地域を越えてサービスを提供していること
とされています。
こと、現在北海道、東北、信越等の地域では降雪による⼤きな障害が出ておりますが、今シーズンに限ったことではなく毎年のように発⽣しております。通所系サービスは、要介護⾼齢者を⾃宅から施設までの送迎サービスが組み込まれている中、このような状況下では安全運⾏への⽀障はもちろんのこと、乗降⾞における安全性を確保する上でも、雪かき等を介護従事者が都度⾏っている事実があります。
これらの重労働負担に加え、⾼齢者の移動介助にも時間を要する中、通所介護の報酬は施設に到着した施設内における滞在時間にて⽀払われる設計であることは中⼭間地での通所系サービスの運営継続に⼤きな⽀障となっております。
中には、独居⾼齢者の⾃宅の除雪から始めなければならない、雪国で在宅⽣活を維持するうえでの救助的な状況に陥ることは⽇常茶飯事である。(参考動画:https://h-link.xsrv.jp/movie/03-winter.mp4)
国が⽰している地域包括ケアシステムにおける在宅での⾃⽴⽀援を⾏う上で、通所系サービスが担う役割は、⽣活機能の維持・向上、社会的孤⽴の解消、家族の⾝体的・精神的負担軽減、認知症⾼齢者への対応、フレイル対策、⾃⽴した⽣活に資する活動・参加機会、中・重度者への対応、地域連携拠点等々とても⼤きいと考えております。
つきましては、「中⼭間地域等に居住する者へのサービス提供加算」における算定要件にある【通常の事業の実施地域を越えてサービスを提供していること】を⾒直し、通常実施地域も対象に加えると共に中⼭間地域の実情にそった加算率の設定となるよう求めます。
また、同地域の実情に配慮し要介護⾼齢者の安全な移動介助の為に送迎対応時間をサービス提供時間に含めるような措置を検討するように求めます。
〈参考資料〉
◆冬季間におけるかかりまし経費について北海道は地域上、広範囲にて送迎業務が⾏われており、必要な社会資源の伴わない⾃治体も存在することから、在宅サービス事業所の努⼒によって広範囲にわたるサービスが提供されている。しかしながら、全国⼀律の介護保険サービスの中で、特に冬季間のかかりまし経費は他の地域と⽐較しても、経営に⼤きな負担となっている。冬季間(12 ⽉〜3 ⽉)は年間平均コストと⽐べおよそ32%の費⽤負担増となっている。
送迎サービスはサービス提供時間外とされているため費⽤は各事業者負担となっている。現⾏の保険制度では、収益上の安定した経営を求めるのであれば、7 時間以上のサービス、若しくは 3 時間以上の2 単位を提供しなければならない。北海道のような中⼭間地におけるサービス提供には全国⼀律の介護報酬のため、報酬に⾒合わない重労働、コスト増となっている。さらに広範囲地域への送迎と冬季間の過酷な環境が相まって、サービス提供時間に送迎サービスは終了せず、残業等の残務整理に追われ、コスト増の要因ともなっている。
上記の事から、冬季間の初期投資及び残業代を除くランニングコストで32%のコスト負担、豪雪や凍結による環境対応の 2 重苦、3 重苦の経営環境を余儀なくされている。
⼀般社団法⼈⽇本デイサービス協会
理事⻑ 森 剛⼠